元・自動車商品企画者のひとり言

クルマのデザインについていろいろ考えることが多いので、勝って気ままに書いてみることにした

ホンダ e について書こうと思ったが...

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トヨタ、日産、スバル、マツダは取り上げたので、次はホンダかなと考えていました。ホンダですと主力車種のフィットがモデルチェンジをしていますし、話題性と言うことであればホンダeを取り上げても良いのかもしれません。ホンダeは丸形のヘッドライトだったり、いたずらにダイナミックさや迫力を追求せず、デザインの表現も抑え気味であるところが、タイムレスなデザインだと思います。そこに初代シビックのオマージュをうまく現代的に織り込んでいます。違和感のある部位はなく、うまく仕上げられていると思います。

この車の場合気になるのはデザインと言うよりも立ち位置、ホンダの立ち位置かもしれません。なぜそう思うかというと、この車について「ホンダらしい」と称されることが多いからです。ホンダ自身もホンダeはホンダらしさを重視したと言っています。はたしてホンダらしいとはどういうことなのでしょうか?そして他のホンダ車はなぜそれほど感じられないのでしょうか。何となくはわからなくもないですが、人それぞれ違った「ホンダらしさ」を持っている可能性があります。

実はホンダの社員の多くも「ホンダらしさ」が何かはわかっていないようで、とある記事によるとホンダeの開発に当たっては、社員がそれを共有するために浜松にある本田宗一郎の博物館まで出向いたそうです。ブランド・マネジメント的にはすごいことが起きていると思います。メーカーが自分がどういうメーカーでありたいのか、どう見られたいのかをわからないまま商品作りを行っていて、それを知るために外部にヒントを求めに行っているのです。その記事では「ホンダらしさ」が何かまでは明確には書いてないのですが、ホンダeの開発においては本田宗一郎の、ホンダは他社の真似をしないと言う趣旨の言葉を参考にしたそうです。「他社のマネをしない」というのが「ホンダらしさ」(すくなくともそのうちのひとつ)と推測されます。

ここで気になるのは、「ホンダらしさ」というのはホンダというブランドが提供するコアなバリューだと思うのですが、これがきちんと定義されて、ホンダ内で共有、浸透されたのかというところです。当然他とは違えば何でも良いということではなく、どんな価値を与えることで他と違うと認識してもらうかというエレメントを定義しなければなりません。そういうキーワードやフレーズ自体はたいてい表には出てこないのですが、ブランド内では定義され、商品のコンセプトだったり、デザイン・フィロソフィーだったり、コミュニケーションだったりに一貫性が出てきます。ホンダではこれらを含めてきちんと定義され、共有されているのでしょうか。

日本にいると感じませんが、最近は韓国車も世界に通用するデザイン力を身に付けてきているので、最近のホンダ車(ホンダ車らしいとされるホンダeを除く)を見るとなんか無国籍な感じがします。日本マーケットよりもはるかに大きな世界に輸出して成り立っている企業ですので、ブランドとしてのアイデンティティがきちんと確立されてないとそうなっちゃいますよね。とても心配です。

ちきんとブランド・アイデンティティを定義して、ホンダe以外の車づくりにも反映して欲しいです。